古典園芸植物 細辛の世界

四代続けて細辛の栽培、品種作出をやっています。細辛の未来を危惧して、途絶えさせないためにも品種の紹介や栽培方法の情報放出をしていこうと思います。

推しを語ってみる

細辛を勉強し始めて三年ちょい

しっかりすっかり細辛バカに成長したところで、ヲタとして推し(の品種)を語ってみたいと思います

ただ、まだ新人ゆえ、どの品種も新鮮に感じて好きなんですが、とりあえずその中でも特に好きな品種に絞りました

マニアックに楽しんでいるところを書いていくので、「うわぁ・・・引くわ・・・・・・」と思ってもらえたら勝ちかなと思ってます

 

錦松(にしきまつ)

この品種の存在価値は、浅斑だと信じて疑っていません

メロン果汁100%のような濃い目の浅斑から練乳を入れたようなミルキーな緑まで、浅斑の中だけでグラデーションが完成されています。しかもそのグラデーションの出方も複雑で、まさに自然が作り出した芸術だと思っています。この鮮やかで繊細な色使いはもはや神の領域(言ったもん勝ち)

コントラストの強さが評価される細辛の中で、実はよく見るとこの錦松も地色と斑の色がくっきりしているのですが、複雑怪奇な浅斑の前では些細な事です。ただ、斑ものの性質上、毎年少しづつ違う顔になります。一年間楽しみ慣れ親しんだ葉と新しい葉は違うので、展開したては「去年の方が良かった・・・」と少しがっかりします。でも見慣れて愛着が湧いてくると「今年のこの葉の方がいいかな♪」と思えてきます。

私の錦松愛好は毎年この繰り返しです

 

二枚は同じ株の違う年

 

白雪(しらゆき)

細辛を教わり始めて、まだ名前や斑芸があやふやな頃、「迷彩柄のやつ」と表現していました。メインが霰斑でコントラストが強い為、伝統園芸植物の末裔のくせに抜群の迷彩柄感というギャップ萌えな品種です。しかも名前が白雪(姫)

これも毎年雰囲気は変わるので、より迷彩柄っぽく出ると「よっしゃ」という気持ちになります。ただし品種としての良し悪しと迷彩柄感は一ミリも関係ないです。

 

迷彩柄の着物を着た和風の白雪姫

カオスかな・・・?

因みに、名付け親から、「細辛にも新しい風を入れるために白雪をスノーホワイトに改名するのはどうだろう」と真剣に言われたので全否定しときました

違う、そうじゃない

 

外国産の人気植物にアグラオネマという観葉植物があって、これがまた品種によっては完全に迷彩柄なんです。なので、白雪をこっそりひっそり「和製アグラ」と思っています。アグラファンからは怒られそうですが。

いつか手に入れたら並べてバシバシ撮りたいなと思っています。

 

金牡丹(きんぼたん)

今でこそどの品種もバカみたいに「うちの子は全部かわいい(キリッ」とか思ってますが、品種を教わり始めたばかりの頃、目の前で並んでいる細辛たちの中で蝶谷系だけ華麗にスルーしてました。しかも父から「蝶谷系嫌い?」と聞かれるまで意識もしていませんでした。目を奪われるのは派手な亀甲ものや斑ものばかりで、ちょびっとしか模様が無い蝶谷系は目に留まらなかったようです。そんなある日、金牡丹を教わって、その斑芸の変化を教わって、蝶谷系の見分けに興味を持って、次第に面白さが分かるようになりました。金牡丹は、私にとって蝶谷系に向き合うようになったきっかけの品種です。しかも本芸はやっぱりほんのり地味風味ですが髭が亀甲まで発展した時の派手さと高揚感はかなりのものです。で、次の年もとに戻って肩を落とすまでがワンセットです。それで当たり前なのですが。主(あるじ)を年単位で翻弄してくれるかわいい品種です。

↓普通の段髭で金牡丹の本芸

↓亀甲状に発展している状態。ただし葉形と地色の薄さが残念

摺墨(するすみ)

ひとことで言うと「色黒のただの葉っぱ」です。こんなのに価値はあるの?と聞かれても反論はしません。強いて言うなら「希少性」でしょうか。無いとされ銘鑑から外されたくらいですから。そんな摺墨を好意的に語らせて頂くと、まずは地味。地味極まりない。細辛は侘び寂の植物ですが、そんな侘び寂の向こう側まで行っちゃってます。むしろ、侘び寂とかそれっぽい事言っとけばいいんじゃね?的な芸です。

でも、整った葉形、深い襟合せ、名前の通り墨を塗ったような黒い緑、深みのある艶、それらが合わさって醸し出される重厚感。そんな重厚感がたまらないんです。派手が売りのチャラ品種たちとは厚みが違います。渋さを兼ね備えた演技派俳優です。知らんけど。

このような無地タイプは(細辛の)マニアが行き着く終着点と言われています。色んな斑芸を味わって味わい尽くして最後に基本に帰るといったとこでしょうか。私はよくばりセットな感じで同時進行で味わっています。「みんな違ってみんないい」です。

ただ、よく似た伊勢摺墨と違ってなかなか外では見かけません。でも絶対どこかでひっそり生きていると信じます。庭の隅にある、じっちゃんが残した謎の黒い葉っぱとして(笑)

↓摺墨

↓伊勢摺墨(いせするすみ)

 

紅孔雀(べにくじゃく)

銘鑑から外れ、性質もカンアオイに近いので「お気に入りの細辛」に入れるかどうか迷いましたが、ヲタとして勝手に語r・・・この品種の美しさをぜひ共有したいと思います。紅孔雀は(細辛の芸においては)図ものの括りです。でも紅孔雀の神髄は図自体には無いと思います。普通に展開した葉っぱを普通に見ていても紅孔雀は語れません。晴れた日に紅孔雀を持って外に出ます。そしてそれを頭上にかざします。目に飛び込んでくるのは軸の赤とその先にある緑・白・その間を縫うように走る葉脈の赤。図と泥軸が織り成す色の競演です。

さらに紅孔雀は新芽もとてもかわいいです。土から出たての小さな小さな新芽時代。折りたたまれた葉裏からすでに図が透けて見えています。こちらも赤と緑と白の競演。しかも少し葉がピンクがかっています。両方とも、葉裏が緑一色の他の細辛では真似できない愛で方です。

↓空に透かした紅孔雀

↓新芽時代の紅孔雀

sooooooooo  cuuuuuuuuute!!