古典園芸植物 細辛の世界

四代続けて細辛の栽培、品種作出をやっています。細辛の未来を危惧して、途絶えさせないためにも品種の紹介や栽培方法の情報放出をしていこうと思います。

花についてまとめたデータを見つけたので、今回は花と青軸素心について書いていきます

 

ご存じのとおり、細辛は大半が青軸素心です

銘鑑の9割はカントウカンアオイを改良したもの、残りはヒメカンアオイを改良したものなどです

それらは葉の美しいカンアオイや青軸素心の個体をベースにされています

カントウカンアオイに限らず色々なカンアオイにおいて、自然の山に生えている個体で青軸素心の個体は確率として約3万本に1本と言われています。

(by植物学者)

 

[花の価値]

細辛は江戸時代から今まで、より美しい「草姿」「葉形」「斑模様」のみを追求して改良されてきました

そんな中、園芸としての細辛が生まれるきっかけの一つであるはずの花は、どの愛好家からも興味の対象外でした

実生のためだけの存在とされ、育成の邪魔になるから取ってしまえという愛好家もいたそうです

 

確かに、細辛の花を改良したい!!とは思いません

やっぱりそれよりも葉っぱの改良にこだわっていきたいです

ただ、観賞の対象として楽しむぶんには「アリ」かと思います

 

ほとんどの品種が同じように緑一色の小さな花ですが、見比べると少しづつ違いがあり、意外と個性的です

大きいもの・小さいもの、フワフワした質感やゴワゴワした質感、花弁が開いたもの・花弁が後ろにキュッとまとまっているもの・・・・・・

そして、開花したばかりの花は緑が鮮やかで美しいです

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↓玉霰の花

他の品種と比べてかなり違いがあります

花弁の形や、中の雌蕊の形など

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素心の小さな花は決して主役にはなれませんが、おまけ的な要素として花も観賞するのもまた楽しいかと思います

 

[ヒメカンアオイの青軸素心品種]

帝冠(ていかん)、白蝶(はくちょう)、三光(さんこう)、三光錦(さんこうにしき)、玉霰(たまあられ)、長盛殿(ちょうせいでん)、龍頭(たつがしら)などがあります

ヒメカンアオイ系の細辛は葉っぱが小さめなのが特徴です

うちには今、帝冠・三光・三光錦・玉霰がありますがどれも小さめでかわいらしい葉っぱです

よく実験に使われている未登録品種の雪光殿もヒメカンアオイ系の品種で、小さな葉っぱがたくさん出てくるのが大きな特徴の一つです

 

ほとんどの品種が青軸素心の中、わずかにそうでない品種があります

[ウルミ花(うるみばな)]

茶色が混じる花のことです

銘鑑に残っている品種では、葉桜(はざくら)(カントウカンアオイ)、羅紗丸の図(らしゃまるのず)(アマギカンアオイ)、都の蝶(みやこのちょう)(ミヤコアオイ)(青軸で花の中は薄いピンク)、雪月花(せつげっか)(わずかに色が入る)

 

[泥軸(赤軸)]

葉柄が紫や赤っぽい色になる軸のことです

葉桜(はざくら)(完全な泥軸ではない、半泥といわれる)、鬼笑(おにわらい)(昼夜・タイリンカンアオイ・銘鑑から除外)、蜀光錦(しょっこうにしき)(泥軸と青軸の中間)、夜光の斑(やこうのふ)、緒房亀甲(おぶさきっこう)など

 

[先祖返り]

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こちらは実生で新品種を作っている過程で生まれた先祖返りの品種です

葉っぱを見るとごく普通の細辛のようですが、花は完全なウルミ花です

葉柄も濁っているのでいわゆる泥軸です

泥軸ウルミ花の品種からではなく、カントウカンアオイ系の青軸素心の品種から生まれているので完全に先祖返りといえます

福宝(ふくほう)と名前を付けていましたが、消滅したため今では存在していません