古典園芸植物 細辛の世界

四代続けて細辛の栽培、品種作出をやっています。細辛の未来を危惧して、途絶えさせないためにも品種の紹介や栽培方法の情報放出をしていこうと思います。

白蝶(はくちょう) Hakuchou

↓「覆輪と同色の下がり藤」が崩れて薄い色の下がり藤がはっきり見える

↓上と同じ株の別の年。この状態の方が基本。全体にシンプル

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登録年:昭和8年

葉形:卵形、表面は平坦

葉肉の厚い輝葉

葉色:灰緑

斑芸:下がり藤(長・中・薄緑)、胡麻斑(薄緑)、覆輪(薄緑)

特記:下がり藤と同色の覆輪により、地色が霰斑のように葉脈上に取り残される(リング状)

   葉柄弱く、葉は地面を這うことあり

   ヒメカンアオイの系統

襟合せ:普通

 

似た品種

細辛の中ではありません(カンアオイでは不明)

覆輪はともかく、「斑と下がり藤」で構成された品種がいくつかありますが、白蝶とは似ても似つかない品種ばかりです。

例)星の誉(登録除外)

 

強いて言うなら、逆芸品種と見間違えることがあるかもしれません

芙蓉錦

村雨

芙蓉錦も村雨もぱっと見似ているように見えるかもしれませんが、どちらも蝶と谷があり斑芸としては全くの別物です。さらにこれらとは違い、白蝶は葉の質感が毛葉ではなく輝葉なので、表面がツヤツヤとしています。

 

斑芸を考察する

白蝶の斑芸を「斑・下がり藤・覆輪」として解説してありますが、実は、「逆芸品種に規則的に出る濃い緑の霰斑と薄い下がり藤」という見方もあります。さらに上記の斑芸解説で「覆輪と下がり藤が同色」とありますが、同色の下がり藤と半透明の下がり藤が合体して下がり藤を形成しているようにも見えます。さらに、前回紹介した天竜の「覆輪状の斑」と同じく、これを覆輪として見るか見ないかは人によると思われます。昔の細辛界隈は狭い世界で実物を見て取引するため斑芸を詳細に書き起こす必要はなかったのかもしれません。それが今の混乱の元になっているような気がしてならないのですが、幸い、白蝶は多少変化したところで他の品種に似ることはありません。白蝶の全体的な見た目を覚えてもらえれば間違うことは無いはずです。

長い間銘鑑でも下の方に載せられ、特に上質の斑芸でもない白蝶。しかしながら丁寧に栽培すれば、少し癖のある色味と輝葉が相まってなかなか美しいひと鉢になります。また葉柄が弱いため高さは出しにくいですが、斑芸が主張しないぶん葉数多めに作り、こだわったデザインの鉢と合わせてみるのも面白いかもしれません。蝶が無いけど「白蝶」。おしゃれな鉢の上で美しい白い蝶を舞わせて楽しむのはいかがでしょうか

 

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