古典園芸植物 細辛の世界

四代続けて細辛の栽培、品種作出をやっています。細辛の未来を危惧して、途絶えさせないためにも品種の紹介や栽培方法の情報放出をしていこうと思います。

株分け色々

細辛の株分けは一期一会

1つとして同じ形の芋はありません

切る場所がすごく分かりやすい時もあれば、悩ましい時もあります

そんな時の参考になればと思い、今年も始まった株分け祭りで見つけたケースを紹介していきます

 

今年の第一陣

鉢から出して洗ったのち、殺菌剤で薬漬けにしました

今は出番が来るまで根っこが乾かないようにお風呂タイム(水風呂)

根っこがはみ出てる部分はたまにスプレーでかけ湯(水)をしてるので保湿バッチリ

細辛を植え替える時は、根っこに鼻を突っ込んで匂いを嗅ぐのも忘れずに(大事)

スパイシーでマウンテンな匂い。

 

さて、始めます

 

ケース1:ひっかけ問題 by優宝

根っこがなかなか残念な感じ

とりあえず割るとしたらどこを選びますか?

私(まだ初心者)はここを選びました

一角の離れ具合があからさま

ひっくり返したところ

答えは

ここでした

大きな塊のちょっとえぐれている部分

裏から見たところ

こちらから見るとナイフ無くても手でパキンといけそう

なぜかって?

ここで切ると小さな方の株がかなりしょぼくなります

それはあまりよろしくない(勝手にこのサイズに割れちゃうこともあるけど)

さらに、小さな離れを切り離すとそっち側の根っこがかなり物足りなくなります

この短い根っこがきちんと長く伸びてればまだ良かったのですが、これを切り離すのはリスクになります

なのでここは据え置き

 

正解の場所の方は、裏から見ると意外に切りやすくなっています

この時大事なのが、芋の形としての切りやすさに加えて、「そこで切ったときそれぞれの株に根っこがどれくらい残るか」です

この株の場合、割合云々よりも全体的に根っこが残念だったので、葉っぱを間引いて株分けしても良かったけど、これはこのまま割らずにしばらく根っこを育てていきます

 

ケース2:邪魔な古芋 by福姫

カッターの先が切るところ

切り落とされる側は古い芋御一行様です

ちょっと色が濃くて根っこの先がありません

白くて長いきれいな根っこから見てちょっと邪魔な存在です

古芋も株の大事な一部ではありますが、大きな株にとっては無くても問題ありません

むしろ控えめに言って邪魔です

古芋を取ってその空いた空間に根っこを伸ばしてもらいます

本体の根っこが生えているすぐ下のキワキワから切りました

真ん中らへんの、ちょろんと出ている短いやつがあるところです(芋が裂けたカケラ)

きちんと切り落とそうとして芋の最後まで刃を入れると向こう側の根っこまで切ってしまうのでお気を付けを

切り落とされた古芋

これくらいなら芋吹きする可能性は充分にあるので捨てずに植え付けます

発芽率100%とは言えませんが、捨ててはアカンです

捨てたら試合終了です

 

ケース3:割らない選択 by吉法師

よく見るV字芋です

どこを切るか?そんなの答えは一つ

根っこのボリュームも申し分なし

ただ左側はちょっと小さめの株になります

増やしたいなら迷いなく株分けしますが、今のところは大株にしてから割ることにします

「割れるけど割らない」という選択肢もありです

この判断はどの植物も一緒ですね

「スペース」というまた別の大問題も湧いてきますし(笑)

細辛は成長しても小さい分だけ有利です('ω')

 

ケース4:取れてもた by白雪

一株を二つに割ったら(左右)、古芋が取れてもた(真ん中)

芋の形によってはあるあるです

どちらもそんなに大きな株じゃなくなったので古芋も一緒にくっついていると良かったんだけどしょうがないです

この古芋も芋吹きする可能性は充分にあるので捨てずに植えましょう

 

ケース5:あえて小さくする by白王楽

巨大な葉っぱに大味な芸

ちょっと残念な状態の白王楽

ゴリマッチョに育ちすぎております

いや、ゴリマッチョは否定しませんが、細辛ではそれよりもキャシャーンなモデルタイプの方が美しく見えます

そこで、株分けするような大株ではないですが、あえて株分けして体力を落とすことで繊細な葉っぱを繰り出す方向にもっていきます

で、きれいな白王楽の芸が出れば万々

以前、微妙な葵錦を株分けしてショック療法で上作させた、あの感じです

ちょっと思った以上にうまくいってビックリしましたが

小さくするリスクというものがあるのでやる場合はよく吟味してください

また絶対上作するという保証もありません

 

ケース6:戦力外 by御所桜

中央の、ブツ切り状態の短い根っこたちは古い芋にくっついてる根っこです

根っこのボリュームを考えるときこれらの根っこは戦力外として考えます

古芋は切り離しにくい状態でくっついている上に、株分けしてもそれぞれの株で根っこのボリュームが足りないのでこのまま割らずに育てることにしました

(すでに1回割ってある)

 

ケース7:古芋を残す by金牡丹

芋の部分を真上から見た状態です

ピンセットの先で割ります

割るところが分かりやすいパターン

株分けした後の片方

手前の、ピンセットが指している黒い塊が古芋です

今までの説明では古芋は取っていましたが、これはあえて残しました

なぜなら株がまだ小さいから

大株にとっては邪魔な古芋でも、小株にとってはまだ大事な一部です

株サイズを保つためにも小さな株では古芋は取らない方がいいです

残しておくことで芋吹きして葉数を増やすチャンスにもなります

ちなみに、分ける際にどちら側に古芋を残すか選べる時は、小さくなる方に古芋がくっつくように切ります

 

番外編:展示品として仕立てるための株分け by淡墨

芋は初心者向きのV字タイプ

今年、このままの葉数で品評会に出しました

細辛は本来、たくさんの葉数でボリューミーに仕立てる植物ではありません

1枚ではさすがに寂しいですが、せいぜい3・4枚くらいの少ない葉でいかに良い出来だけの葉にするか、いかに徒長させず葉の向きもバランスよくして美しい株姿にするかが大事です

大株でごまかさずに、少ない葉数できれいに作り上げるのが細辛の醍醐味であり、細辛本来の楽しみ方です

そしてまた、難しいところでもあります

淡墨さんもお披露目は終わったので、ここからは控えめに割りつつ、展示に向くような株に仕立てていきます

 

おまけ:古芋取りと挿し木 byパンダ

ついでに自分の寒葵コレクションたちも植え替えしました(レアもんは持ってません)

ごく普通のパンダ

けっこう大きな鉢使ってるのに根っこパンパン

細辛もこれくらい気合い入れてモサモサしてくれればいいのに・・・・・・

根っこの海の中から古芋発見

細辛も超大株にするとこのように根っこの中から古芋が現れます

細辛の超大株を株分けするときはまず、この古芋から取ります

指でつまんでそっと折るとポキッと取れてきます

そうするとあとの株分けがしやすくなります

せっかく大株の古芋の取り方を教わったばかりなので、古芋取り、やってみました

 

なんということでしょうorz

古芋が細切れに・・・・・・

このまま株分けするかどうか悩みながらやったのが駄目だったのでしょうか

それともB型が持つテキトウさが本領を発揮してしまったのでしょうか

さすがにこれは捨てました

 

細辛の大株から取った、これだけ真っ黒の古芋はどれが芋吹きしてどれが芋吹きしないのか、今までデータを残してなかったので、今やってます

結果が出たら(早くて春かな?)また記事で報告します

 

もう一つB型のテキトウさの犠牲になった事案があります

植え付けてるときに1本ポキリ

土を入れて棒でつついているときに株の真上を刺してしまって1本ポキリ

 

昔の園芸雑誌で寒葵の挿し木の記事を見た挿し木マニアの私

挿さざるべきか、否、挿す(とりあえず普通のやり方で)

古葉と新芽のセットが二本なので、一応古葉だけを切ってみる

で、メネデール(だった気がする)へ投入

少しだけ浸かっている状態

五日目の今日、折れた部分をきちんと切り直していないことに気づく

けど

まあ、いいか(B型)

 

カンアオイ界隈での挿し木の常識非常識は分かりませんが、細辛では挿し木の情報は今のところ聞きません

これがうまくいったら細辛でもやってみようかなと思います