古典園芸植物 細辛の世界

四代続けて細辛の栽培、品種作出をやっています。細辛の未来を危惧して、途絶えさせないためにも品種の紹介や栽培方法の情報放出をしていこうと思います。

襟合せと燕尾(えんび)

2021/7 詳細な内容に訂正しました

 

襟合せ

「葉身の基脚が左右重なる様、蝶合(ちょうあわせ)ともいう」

つまり、♡マークの上の部分の重なり具合です

葉形を芸の一つとして見るとき、一番意識し、また面白味を感じるところが襟合せです。出来不出来によって株や葉ごとに多少変化しますが、基本的には品種によって「あるべき形」があります

この形は大きく5段階に分けられます

 

最不良型(開く)

一か所も重なることなく完全に開いている

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旭鶴(あさひづる)

 

不良型(浅い)

一部、極わずかに重なるか重ならないかくらいの状態

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天の川(あまのがわ)

普通型

一部重なるが、その範囲は極わずか

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玉桜(たまざくら)

 

良型(深い)

広い範囲で重なる

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天平殿(てんぺいでん) 

 

最良型(極深い)

時に片側を覆い隠すほど大きく重なり合う

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不知火(しらぬい)

 

最不良型~最良型という言葉が示す通り、重なりは深ければ深いほど立体感が出て美しく、細辛においては貴ばれます

銘品とされる品種は大抵、良型~最良型で、「だらしない」と表現される最不良型はまずありません

全体としては良型~不良型が最も多いです。最良型は少ないのが現状なので、育種をするにあたって襟合せを追求するのも面白いかもしれません              

 

写真で表示しましたが、実際には重なる角度等に多少のずれは生じるので目安としてください。また、深く重なる品種でも開く事はあります。その逆もあります。ただし一過性のものでなくてはなりません。あまりにも何年も開き具合が違うようであればその品種であることが疑わしくなります。

「これだけでは品種の確定はできないけど。一つの目安になる」

それが襟合せです。

 

全品種の中で襟合せが最良とされる品種

それは雪橋(せっきょう)です

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あえて表現するとしたら「極々深い」襟合せです。そのために襟に引っ張られるように葉縁が下がり、葉全体がお椀を伏せたような形になります。芸は地味ながらもこの形によって非常に美しい品種とされます

 

反り上がる・反り下がる

襟合せが深い・もしくは極深い品種にしばしば見られる現象です

本来、成長の段階で襟が譲り合うことでうまく重なりますが、時折譲り合わないために現れます

↓反り上がる

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↓反り下がる

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波を打つ襟

襟にいわゆるフリルが入ることがあります

細辛ではビリと呼ばれます

葉縁にも入る品種がありますが、極わずか、襟にも入る品種があります

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折鶴天司(おりづるてんし)

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大黒天(だいこくてん)

 

襟合せが深いほど良しとされる細辛ですが、例えばもともと最不良型とされる旭鶴のような葉形は美しくないのでしょうか?

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好みはあると思いますが、私は決して美しくないとは思いません。

もちろん、深くあるべき品種で開いた時はがっかりします。

ですが、もともと開く品種でも全体として形が整っていればそれでありだと思います。

「うちの品種は襟合せが悪い」と悲観することなく、品種の個性として受け入れ観賞を楽しんでみてください




 

燕尾の形態

燕尾とは襟の先端が伸び、燕尾服のようになっている部分の事を言います

燕尾芸といい、長さによって「大燕尾」「中燕尾」「小燕尾」と分けられます

♡マークでいうと上の二つの山が長いか短いかです

品種ごとで違いがあり、ほぼ変化しませんが、品種特定する上ではっきりと参考になるほど違いのある芸ではありません

今までほぼ注目されていない芸なので、小さな個性としての紹介です

 

大燕尾

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↑福玉錦(ふくぎょくにしき)

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中燕尾

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↑金鳳錦(きんぽうにしき)

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 小燕尾

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↑華心(かしん)

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 燕尾無し

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↑太閤錦(たいこうにしき)

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