2021/7 詳細な内容に訂正しました
葉の表面の質感のことを「地合い(じあい)」といいます
大きく毛葉(けば)と輝葉(てりば)に分けられ、品種を特定する上で重要な要素となります
①毛葉(けば)・・・表面に細かく短い毛が密に生えている状態で、細辛ではこれが多いです
肉眼では見えないほどの毛先は△や〇など様々な形があり(植物学者が発見)、そのために光の屈折が変わり、光り方がわずかに変化します。
品種によって形が変わりますが、これによる品種の特定は肉眼では不可能です
品種例→葵錦・老楽・おかめ・金鳳錦・皇陽・泰山雪・谷間の雪・地球宝・千代田錦・鳳来の華・三笠・吉野桜など
谷間の雪(たにまのゆき)
白牡丹(はくぼたん)
金鳳錦(きんぽうにしき)
天鈴殿(てんすずでん)
朝日錦(あさひにしき)
吉法師(きちほうし)
毛葉の品種の注意点
毛の間に細かなゴミやほこり・薬品等の物質が入り込みやすく取りにくいです。ゴミの詰まったタワシを想像してもらえれば分かりやすいかと思います。ゴミが入り込むと汚れた葉として見える為、栽培環境に注意が必要です。自然環境に近い状態で栽培する時は、特に潅水時や降雨時に周りからのゴミや土埃などが葉面に被らないように工夫した方がよいです。
↓ゴミやほこりが入り込んで汚れたように見えている状態(雪月花(せつげっか))
↓汚れの無い雪月花
また、強い光に当たると毛が焼けてその部分だけテカテカとした状態になってしまいます。これは地色が薄い色の品種に起こりやすく、昔、一部の愛好家たちは焼けて輝葉のようになってしまった状態のことを「ベト」と言っていたそうです。
↓葉先がベトになっている朝陽(ちょうよう)
②輝葉(てりば)・・・表面に毛が無くつるつると輝いている状態。カンアオイに多い
こちらも品種ごとにわずかに輝き方はかわりますが、当たる光などのえいきょうも受けるため、輝き方による品種の特定は不可能です
毛葉と違い、ゴミの入り込みによる汚れの影響は少ない為、自然環境で栽培しても美しい葉に作ることができます
品種例→金閣・錦丹頂・錦鳳・黒牡丹シリーズ・玉霰・司牡丹・白蝶・葉桜・福牡丹など
黒牡丹(こくぼたん)
福恵比寿(ふくえびす)
摺墨(するすみ)
不知火(しらぬい)
少数派の地合い
絹葉(きぬば)・・・輝葉と毛葉の中間。半輝葉とも言う
輝葉にも毛葉にも見える為見慣れないと難しいです
ただ、毛葉に比べるとフワフワ感が少なく、輝葉に比べるとツヤツヤ感が少ないです
品種例→銀輝晃・蜀光錦・雪橋・玉羅紗・天竜・帝冠・常盤・雅など
明星(みょうじょう)
安土の誉(あづちのほまれ)
銀輝晃(ぎんきこう)
羅紗葉(らしゃば)・・・葉の表面に細かい凹凸があり、ごわごわして厚みがあるように見えます。天城カンアオイに多く見られ、細辛においても天城カンアオイ系の品種がこれに当たります。品種数はとても少ないです
品種例→羅紗丸・羅紗丸の図など
羅紗王(らしゃおう)
同じ芸の毛葉と輝葉
同じ模様でも毛葉と輝葉があり、その場合もちろん品種は違います。そのため、毛葉か輝葉かを見分けることは必須です。地合いが品種見極めに重要な要素というのはここにあります。絹葉まで見分けられるのが理想ですが、まずは目の前の葉が毛葉なのか輝葉なのかをパッと見て分かる事がスタートとなります
「谷と蝶」
毛葉:谷間の雪(たにまのゆき)
輝葉:丹頂(たんちょう)
「亀甲」
毛葉:昭和錦(しょうわにしき)
輝葉:福牡丹(ふくぼたん)
「わずかな斑」
毛葉:残雪(ざんせつ)
輝葉:黒牡丹霰斑(こくぼたんあられふ)
「蝶」
毛葉:露の蝶(つゆのちょう)
輝葉:司牡丹(つかさぼたん)
「谷」
毛葉:黄金橋(おうごんきょう)
輝葉:金閣(きんかく)
地合いを意識して撮る
天鈴殿(毛葉)
毛が水をはじいている部分もありますが、水にぬれている部分を見ると毛葉なのか輝葉なのか分かりにくく、また、模様も捉えにくいです
時折、水やり後なのか葉が濡れた状態の写真を見ますが、水に濡れた葉では毛葉の品種が輝葉のように映って見えることもよくあります
ですので、地合いや斑芸をはっきりさせる意味でも乾いた状態で撮影するのが望ましいと言えます。もちろんどう撮影するかは好みや目的もあるので一概には言えませんが、地合いも映すことを意識して撮影してみるのも楽しいかもしれません