古典園芸植物 細辛の世界

四代続けて細辛の栽培、品種作出をやっています。細辛の未来を危惧して、途絶えさせないためにも品種の紹介や栽培方法の情報放出をしていこうと思います。

雪月花(せつげっか) Setsugekka

↓斑芸が主張しすぎないので色々な鉢と合わせやすい(と思う)

↓軽石鉢で

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↓雪月花の花(ウルミ花)

↓春の採光不足により伸びすぎ

成長中の小さな葉は秋葉


登録年:明治17年

葉形:楕円形、表面は平坦

葉肉の薄い毛葉

葉色:濃い緑

斑芸:玉(大・薄緑)、亀甲(葉脈・地色)、霰斑(薄緑)、胡麻斑(薄緑)、流れ斑(薄緑・若緑)、浅斑(若緑)

特記:地色の葉脈亀甲が浮かび上がる

   斑の色が濃い為、全体が暗く見える

   花はわずかに色が入る(ウルミ花)、青軸

襟合せ:普通

 

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似た品種

雪月花に似た品種は(カンアオイ全般では分かりませんが)細辛では一つもありません。さらに、わき葉や幼葉でさえなければ芸が大きく変わることはなく、ほぼ常に安定しています。一度覚えたら見極めしやすいトップクラスの品種です。

 

丈夫な下もの

上質の斑芸でもなく、日本細辛連合会が発行する銘鑑の下の方に位置し、安価でよく出回るような品種をベテラン勢は「下もの」と呼んで見下します。そして、雪月花もそんな位置づけとなっています。ネットでの取引を見ても、他の品種に比べて低価格となることが多いように感じます。だからこそ、今一度見直したい品種でもあります。低価格で入手しやすく、細辛の中でも丈夫で葉数が増えやすいです。単に栽培するだけなら、とても栽培しやすい品種です。

ですが、

きれいに作るとなるとまた別です。葉軸が伸びやすく、葉数が増えるのですから、株姿が乱れやすくバランスの悪い見た目になりがちです。毛葉なので光が強ければ毛が焼けますし、環境によっては毛の間にゴミがたまり汚くなります。もともと斑の色が濃いので、なるべく鮮やかになるように多肥に気を付けなければなりません。丁寧に管理した雪月花は、銘品と呼ばれる品種たちにも負けない和の美しさがあると個人的には思います。いい名前をもらいすぎという意見もありますが、一見質素な葉模様の中に美を見出し、美しい響きの名前を与えた明治の趣味者たちには感服します。